相続した不動産を共有名義にすることのデメリット
1 自由に売却することができなくなる
相続した不動産を共有名義とした場合、不動産を売却するのにも共有者全員の同意が必要になります。
そのため、不動産売買に必要な書類、例えば、不動産売買契約書、重要事項説明書、媒介契約書といった書類には原則として、共有者全員の署名・捺印が必要となります。
共有者が植えれば増えるほど、署名捺印に時間を要し、相当な負担になります。
また、不動産が共有名義になった場合に、売却諸経費の精算の仕方で揉めるケースも珍しくありません。
例えば、共有者の一人だけが固定資産税等の不動産に関する維持費・管理費を負担していた場合に、そのような共有者から「不動産の売却に伴い、そういった維持費・管理費も含めて売却代金の中から清算してもらいたい」という希望が出ることがあります。
他の共有者がそれに応じればよいのですが、他の共有者がそれに応じない場合、その点をめぐって争いが生じ、不動産の売却自体が止まってしまう場合もあります。
相続税の納税資金を不動産の売却代金の中から捻出することを想定しており、納税期限が迫っているような場合には、不動産の売却手続が止まってしまうことは大きな問題になります。
このように、共有名義の場合には、不動産の売却も共有者全員で合意が取れないことによる制約が伴いますので、この点は共有名義にすることの大きなデメリットといえます。
2 自由に賃貸することができなくなる
共有の不動産を第三者に賃貸する場合には、「管理行為」に当たりますので、共有者の持分価格の過半数の賛同を得る必要があります。
信用性があり借り手として良いテナント候補がいたとしても、共有者の持分価格の過半数を得られなければ、賃貸をすることができませんので、もし共有者同士で揉めてしまうと、良いテナントに対して即時に賃貸することができず、せっかくの賃貸の機会を逸してしまう場合もあります。
また、賃貸すること自体は共有者全員の合意が取れたとしても、賃借人から収受した賃料や管理費を誰が収受し、誰が管理するのかという問題があります。
共有者の一人が代表して賃料や管理費を収受し、その共有者が他の共有者に持分に応じた賃料等を払い込むということができれば良いのですが、煩雑ですし、共有者同士で仲が悪いと上手く分割されないことも想定されます。
また、賃貸物件の修繕費等について誰がどのような割合で負担するのかについても。共有者同士で揉める可能性があります。
このように賃貸という管理行為においても、共有名義である場合には、様々なリスクが想定されます。
このように不動産を共有名義にすると、不動産の管理や処分において様々な制約が伴います。
このような制約があることも踏まえ、相続した不動産を共有名義とするべきかについては検討された方が良いといえます。