遺言
遺言を作っておくとよい人
1 法定相続人以外の人に遺産を遺したい場合
相続が発生した場合、民法で定められる法定相続人が遺産を相続することとなります。
したがって、例えば内縁の配偶者に遺産を遺したい場合には、遺言で内縁の配偶者に財産を遺す旨の意思表示をしておかなければなりません。
遺言が無い場合には、法定相続人同士で遺産分割協議をしなくてはなりません。
法定相続人以外の人に遺産を遺そうとする場合、その遺産を取得する人と法定相続人との間に対立が生じやすくなります。
遺産分割協議をせずに遺産を遺すためには、遺言書を作成しておく必要があります。
2 相続人間で遺産分割協議をすることが難しいと思われる場合
⑴ 相続人間で感情的な対立がある場合
前述の通り、遺言書がない場合、相続人間で遺産分割協議を行うこととなります。
相続人間で遺産分割協議の合意がまとまれば問題無いのですが、相続人間の関係が良好でない場合等では遺産分割協議の合意がまとまらず紛糾することもあります。
このような事態が懸念される場合には、ご自身の死後に相続人間で揉めることを避けるために、遺言書を遺すことをおすすめします。
遺言書がある場合、遺言書には遺言者の生前の意思が記載されていますので、遺された相続人も遺言者の意思を尊重し、相続人間での揉め事をあらかじめ避けられることがあります。
また、遺言書には付言事項といって、法的拘束力はないものの遺言者の生前のメッセージを自由に記載することができる欄があります。
付言事項に遺言者の生前のメッセージを記載することで、相続人間の感情的な対立を和らげることを期待できます。
⑵ 相続人の認知能力が低下している場合
相続人のうちの誰かの認知能力が低下し、すでに意思疎通が出来ない状態にある場合には、そのままでは遺産分割協議をすることができません。
このような場合、成年後見人を申立て、成年後見人が選任されてから、成年後見人が遺産分割協議を行うことになります。
しかし、成年後見人が選任されるまでには、一般的に3~4か月ほどの時間を要します。
また、成年後見としては被成年後見人の利益を確保するために、最低限法定相続分の取得を主張することが一般的ですので、成年後見人がついていない場合と比べると、柔軟な遺産分割協議を行うことは難しくなります。
相続人のうちの誰かの認知能力が低下し、すでに意思疎通が出来ない状態にある場合には、遺産分割協議に時間がかかり、かつ、難航することが予想されます。
したがって、このような事態を避けるためにも、相続人の認知能力が低下している場合には、遺言書を作成しておくことをおすすめします。
3 相続人が誰もいない場合
法定相続人が誰もいない場合、特別縁故者に該当者がなければ、被相続人の財産は国庫に帰属することとなります。
特別縁故者とは、被相続人と一緒に暮らしていた人や被相続人の身の回りの世話をしていた人が該当します。
しかし、特別縁故者自身で家庭裁判所に対して申し立てをして家庭裁判所に認められなければならない等、その請求は煩雑なものとなっています。
そこで、ご自身の法定相続人は誰もいないけれど、ご自身の身の回りのお世話をした方に対して財産を遺したいと思われる場合には、遺言書にその意思を明示しておくことで、スムーズに財産を遺すことができます。